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エンジニアを目指す初心者が陥りがちな罠と回避方法
- #プログラミング 独学
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エンジニアとしてのキャリアをスタートする際、多くの期待と挑戦が待ち受けています。新しい技術、未知のプロジェクト、そして学習の連続。これは刺激的でもあり、同時に困難を伴う「旅」でもあります。
特に初心者のエンジニアにとっては、この道のりは予期せぬ落とし穴「罠」が隠れていることが多いのです。
RareTECH編集部では、これらの罠を明らかにし、それを回避するための実践的なアプローチを提供したいと考えています。これらの罠にハマったままですと、低単価な「量産型エンジニア」の地位に甘んじるかもしれません。
この記事では、初心者が陥りがちな一般的なエラーや誤解を取り上げ、それらをどのように回避し、より効果的にエンジニアとしてのキャリアを築いていくかを探求します。
目的は明確です。技術の追求だけではなく、効率的な学習方法、チームとのコミュニケーション、プロジェクト管理のスキルなど、エンジニアとして成功するために必要な多面的なスキルセットを身につけること。その先には高単価である「希少型エンジニア」の道も開けているでしょう。
この記事を通じて、読者の皆様が自身のキャリアにおいて直面するであろう課題を克服し、エンジニアとしての道を確固たるものにしていく手助けができればと考えています。
量産型エンジニア・希少型エンジニアって何?という方は次の記事をご覧ください。
監修者
古里 栄識
クラウドエンジニア/RareTECHメイン講師
慶應義塾大学理工学部卒業。フリーランスエンジニアとして活動後、AWS Japanに入社。現在は、RareTECH講師としての登壇や、法人向けIT研修講師として勤務。情報処理安全確保支援士。
罠その1 最新技術への過度なこだわり
エンジニアリングの分野では、日々新しい技術やトレンドが登場します。特に初心者、エンジニア初学者にとって、最新技術はまるでお宝のように輝いて見えます。誰よりも早く新しい技術をマスターして、他のエンジニアに差をつけたいと思うのは自然なことです。
しかし、最新技術への過度なこだわりは、時には大きな罠となります。最新のフレームワークやプログラミング言語は、常に進化を続けています。最新の技術を使いこなすためには、常に最新情報をキャッチアップし、新しいスキルを習得し続けなければなりません。これは、初学者にとっては大きな負担となります。端的に効率が悪いです。
また、最新技術が必ずしもプロジェクトに最適とは限りません。最新技術は、多くの場合、複雑で、使いこなすのに高度なスキルが必要です。また、まだ十分に実績が積まれておらず、安定性に欠ける場合もあります。
そのため、初学者は、最新技術へのこだわりを捨て、基本に忠実な技術の選択を心がけることが大切です。ピラミッド型の知識の積み上げを意識してみましょう。基本的な技術をしっかりと習得していれば、新しい技術を学ぶ際にも、より効率的に学ぶことができます。また、基本的な技術は、どんなプロジェクトにも適用できるため、常に需要があります。
もちろん、最新技術を学ぶことは決して悪いことではありません。しかし、最新技術へのこだわりを捨て、基本に忠実な技術を習得することを最優先にしましょう。
回避方法
- 基本に忠実な技術選択
エンジニアとしての基本的な技術と原則を習得することが重要です。たとえば、プログラミングの基本、ソフトウェア開発の原則、アルゴリズムなどの理解は、どんな新しい技術にも適用されます。基本を固めることで、新しい技術を迅速かつ効果的に学ぶことができます。
- 問題解決に適切な技術の適用
どの技術を選択するかは、その技術がプロジェクトの要件や問題解決にどのように貢献するかに基づいて決定するべきです。最新の技術を採用する前に、その技術が実際にプロジェクトに価値をもたらすかどうかを評価します。時には、より確立されたRuby on Railsのような技術が最良の選択となることもあります。むしろ多いかもしれません。
罠その2 学習リソースの選択ミス
エンジニアとしてのスキルを磨くためには、質の高い学習リソースを見つけることが重要です。インターネット上には数え切れないほどのチュートリアル、オンラインコース、書籍がありますが、すべてが有益とは限りません。初学者が品質の低い、または自分の学習目標やスキルレベルに不適切なリソースを使用すると、時間の無駄につながり、間違った情報や技術を学ぶリスクがあります。
適切な学習リソースの選び方を誤ると、以下のようなデメリットがあります。
- 時間の無駄
- 間違った情報や技術を学ぶ
- 学習のモチベーションが下がる
回避方法
適切な学習リソースを選ぶためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 信頼性と品質
学習リソースを選ぶ際には、その信頼性と品質を検討することが重要です。業界で評価の高い教育機関や専門家によるコース、高い評価を受けている書籍やオンライン教材を選びましょう。また、他のエンジニアからの推薦やレビューも参考になります。
- 学習目標とスキルレベル
学習リソースを選ぶ際には、自分の学習目標とスキルレベルを把握しておくことが重要です。初学者であれば、基本的な概念やスキルを学べるリソースを選びましょう。また、自分の興味や専門分野に合ったリソースを選ぶことも大切です。
- 実践的な内容
理論的な学習だけでなく、実際に手を動かすことも重要です。オープンソースプロジェクトへの参加や、自分で小さなプロジェクトを始めることは、学んだことを実践に移す素晴らしい方法です。実際のコードを書き、問題を解決する過程で、理論がどのように実世界で応用されるかを理解できます。
具体的な例
- 信頼性と品質
プログラミング言語のチュートリアルやオンラインコースを提供する教育機関として、Udemy や Coursera は、業界で高い評価を受けています。また、プログラミングの基礎を学ぶための書籍として、矢沢 久雄著の「プログラムはなぜ動くのか」や、山本陽平著の「Webを支える技術」は、定番の書籍として知られています。この他、おすすめの書籍は次の記事を参照してください。
- 学習目標とスキルレベル
初学者向けのプログラミング学習リソースとしては、アルゴリズムやデータ構造、ソフトウェア開発の原則などの基本的な概念を学べるリソースがおすすめです。特定のプログラミング言語やフレームワークを学びたい場合は、まずは公式のドキュメントを眺めましょう。その後に、UdemyやYoutubeで言語やフレームワークの専門家によるコースを探し、薦められている書籍を選ぶとよいでしょう。
- 実践的な内容
ややハードルは高いですが、Githubなどからオープンソースプロジェクトへの参加することは、エンジニアとしてのスキルを磨くための素晴らしい方法です。実在のプロジェクトに参加することで、実際の課題に直面して解決策を導き出す経験を積むことができます。思い切って自分でTodoアプリを改修するなどの小さなプロジェクトを始めることも、学んだことを実践に移す効果的な方法です。自分の興味やアイデアをもとにプロジェクトを進めることで、モチベーションを維持しながらスキルを磨くことができます。何より自由に作れるのがメリットです。
罠その3 完璧主義
開発における完璧主義は、エンジニア初学者にとって大きな罠になり得ます。完璧なコードやプロジェクトを目指すことは、生産性の低下や挫折感につながる可能性があります。
完璧主義は、理想的には聞こえるかもしれませんが、実際には達成が困難です。経験上達成したことがまずありません。完璧な解決策・ソリューションは存在せず、完璧を追求することは、開発プロセスを不必要に複雑にします。成果と引き換えにお金を払っている人がいると言うことを忘れてはいけません。
失敗例
あるエンジニア初学者は、新しいプログラミング言語を学ぶ際に、完璧なコードを書くことにこだわりました。しかし、その結果、学習の進捗が遅れ、挫折感を味わうことに……。 また別のエンジニア初学者は、Webアプリケーションを開発する際に、完璧な設計を追求しました。その結果、開発に時間がかかるだけでなく、要件変更に対応するのがとても困難になりました。
回避方法
完璧主義を回避するには、以下のことに注意しましょう。
- 実用的な解決策の重視
完璧なコードよりも、実用的で効率的な解決策を目指しましょう。機能的で信頼性が高く、効率的なコードを書くことに集中しましょう。プロジェクトの目標や要件に基づいて、最適な解決策を追求することが重要です。
- 継続的な改善への意識
ソフトウェア開発は、継続的な改善のプロセスです。初期のコードやプロジェクトが完璧でない場合でも、時間をかけて反復的に改善することができます。重要なのは、初めから完璧を目指すのではなく、持続的に学習し、成長することです。フィードバックを受け入れ、それを改善の機会として利用しましょう。
罠その4 ドキュメントとテストの軽視
ソフトウェア開発において、ドキュメントとテストは、ソフトウェアの品質を保証し、長期的なメンテナンスを容易にするために不可欠です。しかし、エンジニア初学者は、これらの重要性を見落としがちです。
ドキュメントなしでは、他の開発者がコードの意図や構造を理解するのが難しくなります。また、十分なテストがなければ、バグや不具合が見逃されやすくなります。
回避方法
- ドキュメントの重要性を認識する
コードを書く際には、そのコードが何をしているのか、なぜそのように書かれているのかを説明するドキュメントを同時に作成しましょう。良いドキュメントは、コードの理解を助け、将来のメンテナンスを容易にします。定番書籍である「リーダブルコード」や、「良いコード 悪いコードで学ぶ設計入門」といった本を読むとその意味がよくわかります。
- テストを開発の中心に置く
テストは、テスト駆動開発(Test-Driven Development: TDD)という開発手法があるくらい重要な要素です。ソフトウェア開発プロセスの初期段階から組み込むべきです。単体テストや統合テストを通じて、コードの各部分が正しく機能することを確認し、バグを早期に発見しましょう。また、テストを定期的に実行することで、コードの変更が既存の機能に影響を与えていないかを確認できます。
失敗例と成功例
エンジニア初学者Aくんは、コードを書くことに集中するあまり、ドキュメントやテストを作成することを後回しにしました。その結果、コードの理解が難しく、バグの修正に多くの時間を費やすことになりました。 もう一人のエンジニア初学者Bさんは、テストを重視し、単体テストや統合テストを徹底的に実施しました。その結果、バグの発生を最小限に抑えることができ、ソフトウェアの品質を向上させることができました。
急がば回れのテンプレのような例でした。
罠その5 コミュニケーションの欠如
ソフトウェア開発において、コミュニケーションは欠かせない要素です。初学者は、プロジェクトへの参加経験が少ないため、チーム内での適切なコミュニケーションが不足しがちです。これは、誤解や非効率な作業を引き起こす原因となり、プロジェクト全体の進行に影響を与える可能性があります。コミュニケーションなどのソフトスキルの重要性は次の記事で解説しています。
参考例
あるエンジニア初学者は、プロジェクトの目的や進捗状況をチームメンバーと共有せず、独自に作業を進めていました。その結果、チームメンバーとの間に誤解が生じ、プロジェクトが遅延する事態となりました。 別のエンジニア初学者は、疑問や問題が生じた際に、チームメンバーに質問することをためらっていました。その結果、バグや不具合を放置してしまい、プロジェクトの品質が低下する事態となりました。
回避方法
さて、質問しずらい・話しづらいチームの雰囲気やそれを放置しているプロジェクトマネージャーの責任はもちろんありますが、自責思考で捉え、チームの一員としてどのように振る舞えば良かったのでしょうか。
- コミュニケーションの重要性を認識する
コミュニケーションは、エンジニアとしての成長に不可欠であることを認識しましょう。何もコミュ力お化けの陽キャのように振る舞う必要はなく、相手と普通に会話ができればそれでいいです。プロジェクトの目的、期待される成果、進捗状況などを定期的にチームメンバーと共有することが重要です。また、疑問や問題が生じた場合には、積極的に質問し、フィードバックを求めることも大切です。
- チームプロジェクトへの積極的な参加
エンジニア初学者は、実際のプロジェクトに参加することで、チームワークの重要性を理解し、コミュニケーションスキルを向上させることができます。オープンソースプロジェクトへの参加や、コミュニティイベント、ハッカソンなどに積極的に参加することで、チームでの作業経験を積み、コミュニケーション能力を高める良い機会になります。
とはいえ「コミュニケーションとかめんどくさい」という方もいると思います。まずは個人開発でスキルを磨くという道もあるので、一旦傍に置いておいてもいいかもしれません。
まとめ
失敗する前にここまで読めた人はラッキーですね。これらの罠を回避し、「量産型エンジニア」可を脱する能性は飛躍的に高まりました。エンジニアとしての成長には、常に新しい学習と適応が欠かせません。本記事で取り上げた5つの罠は、初学者が陥りやすい典型的な問題です。これらの罠を理解し、適切に回避することで、成功への道を切り開くことができます。
具体的なポイント
- 最新の技術に飛びつかず、基本を押さえた技術選択と問題解決に適切な技術の適用を心がけましょう。
- 品質の高い学習リソースを活用し、実践的なプロジェクトへの参加で、効果的な学習を実現しましょう。
- 完璧を目指すのではなく、実用的な解決策の重視と継続的な改善に焦点を当てましょう。
- コードと同様にドキュメントとテストを重視し、品質の高いソフトウェアを開発しましょう。
- 明確なコミュニケーションとチームプロジェクトへの積極的な参加で、チームワークを強化しましょう。
結論
エンジニアとしての成長は、挑戦と成長の機会に満ちています。新たな発見が常にありワクワクします。これらのガイドラインを参考に、継続的な学習と適応を通じて初学者を脱し、エンジニアとしてのキャリアを築き上げていきましょう。